そうです、一郎は先ほどの夢の中にいたのです。
一郎が病院に連れていかれているとき、民間委託の交通事故処理会社「ポリス・レスキューひめじ」の事故処理班が手際よくヴィッツを片付けていた。もちろん大型ダンプはフロントバンパーが変形した程度なので、そのまま姫路警察へ直行した。いつだったかずいぶん前のことだか、駐車違反を警察が初めて民間に委託したときのことを思い出した。たしか１ヶ月ほどはトラブル続出だったが、あっというまに慣れてしまって違反件数も激減したことを思い出した。今では事故処理も民間レスキューか。えらい時代になったものだ。
　さてこちらはトヨタサービスセンター近畿、トヨタはメーカーとディーラーで最新鋭次世代G-bookを都道府県別に管理をしている。ただし首都圏、名古屋中部圏、そして大阪近畿圏は広域管理システムを取り入れていて、大阪、兵庫、京都、奈良、和歌山を一括エリア管理をしている。センターでは担当拠点にすぐさま連絡が行き、店長が動き始めた。ナビに車両管理、携帯電話にITS、ちょっとした動くITルームと言っても過言ではない。なんでも今名古屋で実証実験している「トヨタセルフドライブシステム」という、車のコンピューターにナビを通じて目的地を入力すると、運転席に座っているだけで車が自動運転で走ってくれて、目的地まで言ってくれるというシステムもいよいよ１４年にはトヨタの一部車種でオプション装着になるという。車の進化はいったいどこまで行くのだろうか？　またそれに付保するまったく新しい自動車保険の開発も最終段階と聞いている。　一郎は夢の中で驚きっぱなしだった。
　一郎はそういえば全国の自動車の整備工場ばかり廻っている。だから新型の車などに出くわす機会がここ数年まったくないのだった。どうしてかって、それはトヨタをはじめ２００９年の発売車から、ほぼ１００％低公害車、それもハイブリッド車、ディーゼルハイブリッド車、電気自動車、バイオマス対応自動車が主流になり、そのほとんどが自動車製造メーカー系列のディーラーでしか点検整備が出来ないしくみが確立してきたからだった。勿論全国の5万の整備工場からも批判が続出した。２００５年ごろには全国７万工場以上あった数も、現在は５万工場を割り込んだ数に減ってきている。それは２００７年から８年にかけて政府と国土交通省が、国民にアンケートを取ったり、全国でタウンミぃーティングなどを実施し意見を集約した。結果は責任が取れる信頼がある工場はメーカー系列だという結果が、全国の整備工場の激減の始まりだったのだ。
しかしこれにはメーカーのとんでもない策略が潜んでいた。それは驚くべき事実だった。なんと全メーカーが結託して、毎年適度の（国交省に処罰されない程度）リコールとサービスキャンペーンを連続で発生させるとい、とんでもない詐欺行為の連鎖を続けてきたのだ。それは新車に限定していて、いつもリコールが出るとメーカー系列の拠点にお客様が自ら車両を持ち込み点検整備をしてもらうクセを生活習慣病のごとく現実を作り上げていたのだった。これはもうメーカーや日本自動車工業の詐欺と言うても過言ではない事実だったのだ。一郎はそんなことは無縁の旧態のままの整備工場ばかりと日々付き合っているものだから数年間の業界の変化など、すっかり取り残されていたのだった。実際全国の小さな認証工場では車齢が８年１０年それ以上前の車両整備しか出来ないレベルになっているのだった。
つづく

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