さてトヨタに戻ろう。岡野弘子さんのブィッツが事故をした。エアバックが開くと自動通報でメールが送られる、なんというすばらしいしくみなのだ。これもトヨタの特許だった。最初は三菱が考えていたらしいのだが、何か別の特許に触れるらしく、追随のトヨタに先をこされたのだった。トヨタの販売店からすぐさま店長と担当部員が病院へお見舞いにやってきた。事故を起こしてからわずか４時間後という、驚きの対応だった。
「パパ、パパおきてくださいな。トヨタさんがお見舞いに来てくださったのよ」
なんだ、まだ起きたくない、夢もエエところにさしかかったのに、ねぼけまなこで目を開けると、たしかに妻の車を購入したときトヨタの店で見たことある顔だった。
「大丈夫ですか、よかったですねご無事で」
「どうもありがとう。私は大丈夫だけれど車がね、妻に悪いことしちゃいました」と言うと、
「大変でしたけれどご主人が元気なの確認できて私どももホットしております。それで、ご心配のお車なのですが、事故の示談も時間がかかります。その間トヨタレンタカーをご用意します。勿論トヨタホールディング損保ジャパネットのご契約ですから、示談の割合うんぬん関係なく、新車の乗り換えが出来るスーパー買い替え特約が付保されていますので、すぐ新車のの手配しておきます」と。私は恥ずかしかった。私も損保の社員だぞと言わんばかりに妻弘子のかををにらんだ。トヨタの社員は花束と果物を置いて帰っていった。帰ったのを確認して弘子が、「ごめんなさい、新車の契約のとき覚えてる？　トヨタの任意保険の説明聞いてたら、あなた、こりゃトヨタにはかなわないやって、トヨタの損保で納得したでしょ」　確かにそうだった。なんじゃこりゃ、何でもかんでもトヨタかいな。それならば、私もいっそそのトヨタなんとかジャパネットに転職でもさせてくれ。と心の中で叫んだのは弘子は知る由も無かった。「でもよかったじゃない、すぐに新車が来るンですって。さすがトヨタさん」と何にも考えなくても全部トヨタで決まりって顔している弘子だった。
　全治１週間と診断、別に外傷も無いので明日にでも出られると思っていた一郎だったが、先生の１週間の診断が出たことで医療保険も満額出るそうだし、会社の上司もこの際だからゆっくりしろとお墨付きをいただいたのだ。よっしゃゆっくりさせてもらうとするか。
　最近のニュースは中国のことばかりだ。そろそろ北朝鮮を併合するとか、上海万博のつけが噴出して、内陸部の農民が暴動を起こしているとか、大変なことになっていた。中国の自動車も今では総数9５００万台、日本の８０００万台を抜いている。自動車保険もすごい勢いで伸びてはいるものの、損害率がすごい。もう毎年のように保険料が上がっている。そういえば数年前だったか、最悪のミレアの自動車保険の損害率が60％だったのを思い出した。それ以上で中国は推移している。中国勤務でなくてよかったなどと、いける立場では無いのにアホな一郎だった。
そんな中おもしろい記事を見つけた。記事ではない広告だった。「トヨタホールディング、保険マネージャー募集について」だった。なんだと、読んでいくうちに、これは私に当てはまるかもなどと思い出した。早速ネットで詳しい募集要項を見つけた。ようするに損保業務の拡張による幹部社員の募集ではないか。募集に際しては新人じゃあるまいし、手取りの給料とか年間休日などとガキみたいなことは言うわけもない。よし１週間休みがある。面接は大阪、これは面接してみる価値はあるな。一郎はとんでもない色気が出ている自分に、まだ気がついていなかった。
つづく

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